- 漢字に有利な「インターネット」の世界
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どこまで広がる中国語圏インターネット?
田中則明 2002/04/12(金) 10:12:26
インターネットは、目下「書かれた文字」主体の世界である。
「最小の空間で最大の意味を表わす」ことが可能だと言われる文字、「意味が充満している」文字「漢字」にとって、極めて好都合な世界に違いない。特に、漢字の入力法がほぼ確立した現在、漢字ゆえに節約できるインターネット上の空間には測り知れないものがあると言っても良いであろう。
具体的な例を挙げてみよう。
次の中国語の文語文(原文)を、現代中国語、日本語文語文、口語文に訳出してみる。(日本語文語文の部分は、かなり怪しいが)
六国破滅,非兵不利,戦不善,弊在賂秦。
六国所以滅亡,並不是兵不鋭利,也不是戦不善,其弊端在于賄賂秦国。
六国が滅亡せし所以は、兵力を欠きたるが為にあらず、戦を得意とせざる
故にもあらず、正に六国をして秦国に財物を貢ぎ尽くすという過ちを犯したるが故なり。
六国が滅亡したのは、兵力が足りなかったためではなく、また戦いが下手であったためでもなく、それは、まさに六国が誤って秦に財物をことごとく貢がされてしまったからである。
訳文の出来栄えはともかくとして、一文が締める「スペース」に注目してみると、中国語、特に中国語文語文が際立って「省スペース」を実現していることが見えてくる。文語文でなくとも、中国語のこの面における優位性は歴然としている。
一方、日本語の方は、同じ意味を表すために必要とされるスペースは大同小異である。もし、もっともっとスペースを省こうとすれば、もっともっと漢字を多用するしかないであろう。
この側面から見れば、中国語圏におけるインターネットが他の国や地域よりもより急速に且つより深く人々の生活に浸透して行く可能性は大きいと言えるであろう。少し前になるが、同じような現象に中国におけるFAXの急速の普及がある。FAXが導入される前、中国人とビジネスを行う我々日本人も次のような電報を打たされていた。
4958 2231 3987 9890 0002 3332 ・・・・ こういった電報を受け取ると漢字コード表をめくって、漢字を当てはめて行くのである。もし、番号が少しでも間違うと、大変な誤解が生まれてしまう。
我明天赴津。(当方、明日天津入りします。)が 我明天赴京。(当方、明日北京入りします。) 等になったりしてしまう。
中国語は、「省スペース」というメリットを持つ分、こういうデメリットがあるんだな、を痛感させられる日々をかなり長いこと送っていたところが、ある日、文明の利器、FAXがこの世に出現した。詳しいことは知らないが、恐らく日本人が、自分の生活をより文明的なものにするために、この達筆も悪筆も分け隔てなく相手に送ってしまうという(筆者にとっては、この上なくいまいましい)文明の利器の開発に心血を注いだのであろう。
ところが、FAXは、日本よりも中国において本当の威力を発揮した。まず、上記電報が消えた。そして、中国中を「達筆のFAX」が縦横無尽に飛び交い始めたのである。当時、このような情景に接して、私はひそかに「なんだ、FAXは、日本人が中国人の委託を受けて開発したのか」などと思ったりもした。
そして今、中国を縦横無尽に飛び交っているのは、電子メールである。
そして、ここでまた、この目新しい現象を前にして、興味深い疑問がいくつか湧いてくる。
「果たして、インターネットは、中国語の書き言葉と話し言葉距離を縮めることになるだろうか?」
「果たして、インターネットの普及によって、人々の書き言葉はより洗練された、格調の高いものになるであろうか?」
「果たして、簡体字と繁体字の統一は加速されるであろうか?」 等等である。
なお、インターネットはここに来てまた別の様相も呈し始めている。それは、「IP網」を使った格安の電話通信を可能にしつつあるということである。冒頭で、「目下『書かれた文字』」と申し上げたのは、このことを意識してのことである。近い将来、インターネットは、FAXが持っていた機能をはるかに凌駕し、「音の世界」へと歩を進めて行く前兆であろうか。
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